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100年を彩った品種たち
りんか409

Episode 02 トマト
必殺のパンチを磨け!

トマトはアンデス高原原産で、ヨーロッパを経由して日本にもたらされたのは、
17世紀後半から18世紀初頭にかけてといわれています。
最初は観賞用や薬用として利用され、明治以降に食用栽培が中心となりました。

今やトマトといえば一年中店頭に並ぶ、だれもが大好きな野菜です。ところが、このアンデス高原出身の〝お坊ちゃま〟は気むずかしく、日本の気候下では病気が多発するため、栽培がしづらい作物だったのです。トマトがたくましい〝青年〟に育つのには長い時間がかかることとなります。
トマトはすでに戦前の当社のカタログに掲載が見られます。例えば、「園の泉」(当社種苗カタログ)昭和6年春号には「巨大トマト、サカタス、ジャイアント」について、「当店が苦心改良採種の結果、本年から初めて発売する超大型トマトです」と記載がされています。当時は固定種が中心で、病気が出やすく栽培しづらい野菜だったことが想像されます。

その後もトマトは固定種の時代が続きましたが、戦後の食生活の西洋化もあり、広く食卓に上るようになると、より安定した生産が可能なF1品種が求められるようになってきました。F1化に伴い収量が増えるだけでなく、病気に強くなるなどさまざまな性質が向上します。そこで当社はトマトのF1化と耐病性の育種に挑みました。もちろん、大切な「味」を損なうことなく…。

豊錦

ハウスほまれ

そのような歴史の中で、1962年の「豊錦(とよにしき)」を皮切りに、1960年代に「ほまれ114」「ハウスほまれ」などを発表し、その後も、お尻がとがるファースト系の「TVR-2」「瑞光102」などが続きました。1985年に行われた茨城県つくば市で行われた国際科学技術博覧会(International Exposition, Tsukuba, Japan,1985 略称:科学万博・つくば'85)で「水耕栽培を利用して、一本で1万個以上の実がなるトマト」として話題になったのが「TVR-2」でした。また、「瑞光(ずいこう)102」はハウストマトとして爆発的な人気を得ました。

瑞光102

TVR-2

サンロード

1980年代に入ると、お尻がとがるファースト系トマトは、スーパーでの取り扱いがしづらいなどの理由で、徐々に人気が低下しました。代わりに、他社が発表した完熟系をうたう品種に市場は席巻されてしまったのです。
一品種をつくり上げるのに、私たちは10年以上の歳月を必要とします。他社品種が市場で人気を博している間も、当社育種陣の懸命の努力は続けられていました。その結果、市場奪還を果たすべく、「まごころ」「おどりこ」などを市場に送り込みました。現在もその味の良さで愛されている「サンロード」もこの頃に開発されています。食味のよいトマトは今もその名を残しており、根強く栽培が続けられていくものです。しかし、これらはボクシングで言えば「ジャブ」でした。必殺の「ストレート」には今しばらくの時間を要することになります。

秀麗

りんか409

そして、完成したのが、「王様トマト」の青果ブランド名を冠する品種群です。ボクシングに例えれば「ボディーブロー」でしょうか?王様トマトは、5品種で構成されており、「麗夏(れいか)」、「麗容(れいよう)」、「ろくさんまる」、「マイロック」、「ごほうび」がこれにあたります。「王様トマト」のブランド名は、皆さんも見かけたことがあると思います。この品種群は、株にならせたまま赤熟させても果実が硬く、流通にのせることができます。赤熟させて収穫できるので、リコペンやグルタミン酸などの成分が多く含まれ、栄養的にも味の面でも従来品種を大きくしのぎします。これらに、近年大問題となっている黄化葉巻病に強い「秀麗(しゅうれい)」を加えた「王様トマト」の攻勢で、他社完熟系の市場に食い込み、シェアを徐々に回復していきました。

試合の流れを変えた、必殺の「ストレート」は「りんか409」でした。日本最大のトマト産地でみごとにシェアを獲得し、その能力を示したのです。丈夫でたくさんとれ、もちろん味がよい。トマトの産地が認めてくれました!「りんか409」の産地獲得により、トマトの品種地図は大きく変貌することになります。

パルト

もちろん、必殺のパンチはその後も磨き続けています!100周年記念品種として発表した「パルト」。この品種は赤熟系・王様トマトの一群で、従来トマトで必要だった、ホルモン処理や、ハチによる交配補助を行わなくても実が大きくなる「単為結果性」という性質をあわせもった、画期的品種です。
長い雌伏のときを経て、私たちの品種が市場に受け入れられつつあります。おいしくて、病気に強く育てやすい、そんな、人にも環境にもうれしい、私たちが思う理想のトマトへの挑戦は、創業100年を迎える今、この瞬間も続いています。

そう、育種に終わりはないのです。